インタビュー

やりたいのは各地のあんこを編集した「あんこスタンド」廣川淳哉|編集者

やりたいのは各地のあんこを編集した「あんこスタンド」廣川淳哉|編集者

広島にゆかりのあるnextな人をお迎えし、仕事内容や広島への思いを伺う「ひろし学び部」。第3回目のゲストは、編集者の廣川淳哉さんです。実は廣川さん、「MAZDA」の書籍「MAZDA DESIGN」の編集や、アンデルセングループのデニッシュプロジェクトを手掛けるなど、広島と深〜い関わりのある方。廣川さん自身も広島県福山市のご出身です。

そんな広島と強い絆で結ばれている廣川さんに、仕事において大切にしていることや今気になっているメディアなど、さまざまなことをお伺いしました。

廣川淳哉(ひろかわ・じゅんや) 編集者

「日経デザイン」「AXIS」「Hanako」などの雑誌や「MAZDA DESIGN」といった書籍、いろんな企業のウェブサイトの編集や執筆をしています。ほかにも、コクヨのショップ&カフェ「THINK OF THINGS」のネーミング、旧国立競技場のシートを販売するプロジェクトなど、いろんな仕事をしています。

みんな、読み手との距離を縮め過ぎる。人は、興味のあることしか見ない。

――たくさんの企業とお仕事をされていますが、読み手に思いを届けるためにどんなことに気を付けていますか?

廣川:思いというか、何かしらメッセージを届けるというのは最後の目標であるべきで、まずはどのように接点をつくるか。人は興味があることしか知ろうとしないし、知らないものは見えない。アンデルセングループのデニッシュプロジェクトでは「デニッシュとはなにか?」「デニッシュの歴史とは?」みたいなことを説明するのではなくて、デニッシュを食べている人の写真を、接点にしたいと思いました。ほとんどの人はデニッシュに興味がないはずで「デニッシュとはなにか?」という問いかけは響きません。最初は、写真を通じて「何かおいしそうなものを食べている」と思ってもらって、デニッシュへの興味を持ってもらえたらと思いました。

デニッシュプロジェクトは、いろんな場所にデニッシュを届けて、みんなでデニッシュを食べながら休憩してもらうというコンテンツ。デンマークの人気ブランド「HAY」にアンデルセンのデニッシュを届けたときの様子。
デニッシュプロジェクトの写真の一部。よくある商品説明や歴史などの説明が一切ありません。
デニッシュプロジェクトの写真の一部。よくある商品説明や歴史などの説明が一切ありません。

ーー確かに、興味がないと商品の詳しい説明や歴史までは読まないですよね。しかし仕事をお願いするクライアントはそこが最も伝えたい部分かなとも思ったりも……。「いや、説明や歴史は入れてほしい!」と言われるなど、意見が対立することもありますか?

廣川:うーん。対立することはあまりないですね。企業は自社の商品を出発点にコミュニケーションを考えるので、ちょっと自意識過剰になっていることが多いです。僕は普段の暮らしを出発点にコミュニケーションを考えます。目の前にデニッシュがあったら、歴史や背景よりも、まず食べたいと思います。だからデニッシュを食べている人の写真を使いたいし、トップページの写真も食べかけのデニッシュ。いきなり本題に入るとひかれてしまうので、コミュニケーションはゆっくり慎重に。まずは「おいしそう」とか「食べたいな」と思ってもらって、その延長線上に「デニッシュを知る」があるという順番です。

ーー「始めから情報を詰め込み過ぎない」とのことですが、どのようにして読まれる、見てもらえる、ように工夫していらっしゃるのでしょうか?

廣川:最初は薄い接点で良いんです。その薄い接点を、少しずつ濃くしていく。1〜10まで伝えたいことがあったとして、いきなりすべてを伝えようとしても、伝わらないと思うんですよね。例えば、コンビニにはたくさんの商品が並んでいますが、「おにぎりを食べたい」と思っていたら、おにぎりしか見えません。入り口の雑誌コーナーにどんな本が並んでいるかは目に入らないと思うんです。でも、おにぎりの近くにお茶があったら、おにぎりを接点にお茶に手が伸びるかもしれない。そのまた隣に「おにぎりのおいしい店」みたいな本があったら、ちょっとは気になるかもしれない。そうやって、情報にグラデーションを付けるというか。何を使って、最終的に何を伝えたいかを明確にするのが、いつもプロジェクトの最初にやっていることです。

綺麗なものよりも、リアルなものに興味があります。

ーー多くの人が読みたくなる、見たくなるものには、きちんと理由があるんですね。そんなふうに、伝わるものを作り続けられる廣川さんから見て、最近スゴイなと思う広告やメディアはありますか?

廣川:綺麗なものや作り込んだ物って見慣れているし、いわゆる広告ってもう見ないですよね。だから、今までのやり方や見せ方に乗っかっていないものが好きです。具体的に何かっていうのは今すぐに出てこないんですけど。WEBでいうと『Togetterみたいなまとめサイトはよく見ています。ツイッターの投稿をまとめているだけだと思うんですけど、すでにある情報を整理整頓することで、読み物みたいになっている。なにより、圧倒的にリアルなんですよね。

「仕事の達成感」は、最初の段階。終わった仕事は、あまり振り返りません。

ーー「仕事の達成感」は、どんな時に感じますか?

廣川:やっぱり最初の設計の段階ですかね。本だったら台割、ウェブだったら構成を作った時。最終的に何を伝えたいから、こういう順番で情報をレイアウトするかを決めたときです。基本設計がしっかりしていれば、そこに入る写真や文章には自由度がありながら、一緒に仕事をする人が何をすればいいか迷わない。そういうのが一番やりたいことですね。終わった仕事が発売とか公開されるころには、もう次の仕事をしているので、あまり振り返りません。でも、MAZDAの本が売れたときはうれしかったです。

MAZDA DESIGN』日経デザイン/廣川淳哉 (著) 

デザインを原動力にしてブランド価値を上げ、今なお進化を続ける同社のブランド戦略の全容に迫った1冊。ロードスターから最新ビジョンモデルまで、写真で振り返る「マツダデザインヒストリー」も必見!

 

無類のあんこ好き。やりたいのは各地のあんこを編集した「あんこスタンド」

ーー 最後に、出版物に限らず廣川さんがこれから編集したいと思うものがあれば、教えてください!

廣川:なんだろう。うーん。あんこ屋さんかな。あんこスタンドをやりたいと思っています。日本各地にあるいろんな製餡所のあんこを取り揃えて、その場で最中に入れて出すスタンド。あんこをクッキーで挟んだあんこウィッチみたいなものも良いですね。店名はもう決まっていて「つぶや」。つぶあんが好きなんです。

ーー 今日は素敵なお話をありがとうございました!

トークイベント後は懇親会!アンデルセンの豪華なパンも登場

しっかり学んだ後は、参加者による懇親会を開催。広島ブランドショップTAUから送られてきたお酒やつまみを片手にワイワイ大盛り上がりしながら親睦を深めました。みんなとっても楽しそうです!

参加者から、「可愛い〜!」という歓声が挙がっていたのが、写真に写っているイッツサンドイッチマジックの「アニバーサリーシュープリーズ」。パンでできた(!)ふたを開けると、中には色とりどりのサンドイッチがぎっしり♪見た目も可愛いうえ、一口サイズなので立食パーティにはぴったりですね。

うつわになっているパンのフタ部分には、こんなデザインが施されていました。これはテンション上がります!

他にもご参加の豆菓子のイシカワ(鬼のお面が有名な)の石川社長からきなこ大豆青きなこ黒大豆の差し入れもいただき美味しくいただきました!

さらに、株式会社アンデルセンサービスの礒部社長のご好意によりワインもふるまわれました!こちらの白ワイン「」は、広島県の北広島町にあるアンデルセンファームで収穫されたぶどうで作られたもの。フルーティで飲みやすく、アンデルセンのパンとの相性も抜群でした。

第3回目の「ひろし学び部」も、学びの多い回となりました。次回はどんな素敵なお話を聞けるのでしょうか?第4回目の開催も、どうぞお楽しみに〜!

取材・文/大西マリコ 写真/香川賢志

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