ひろしMAGAZINE

[コラム]広島ジン、故郷(ヒロシマ)に帰る ~東京10年、ワシントンD.C.経由~ 第3話

第3話:ワシントンD.C.から広島へ 世界が注目するなかで

オバマ米大統領の訪問を今週末に控えた広島は、街のあちこちに警官の姿が目立ち始めています。世界で唯一、核兵器を使用した国の現職大統領が、世界で唯一の戦争被爆地・広島を訪問する歴史的な瞬間は、すぐそこです。71年。これは、長いのでしょうか、短いのでしょうか。実際被爆したわけでもなく、広島に生まれ育ったと言っても、身内に被爆者がいない私には、迂闊に推し量ることはできません。

ちょっと身震いしてしまうようなタイミングで、13年ぶりとなる広島での社会人生活がスタートしました。とはいえ、以前働いていた放送局の関連会社なので、一定以上の年齢の人はほぼ顔見知り。これは実務的にも、脳内メモリー容量的にも、精神的にも負担がかなり軽減され、本当に有難かったです。考えてみれば、この、「一定以上の年齢の人はほぼ顔見知り」なのって、すごいことですよね。東京では、クルーさん(カメラマン・音声・照明など)と「はじめまして」から始まる取材もザラでしたし、同じ番組を1年担当していても、顔も名前もわからない人だってかなりいましたから。ただしそのぶん、広島では世間も狭いのですが(笑)。

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G7外相会合時の平和公園前

広島に“寄り添っていた”つもりが…

自称「東京生活卒業旅行」から帰ってまもない4月上旬。G7外相会合が開かれ、オバマ大統領が広島を訪れるかどうかの試金石として注目されました。外相会合直前のある日。上司と定食屋で昼食をとりながらの会話で、「ほんとに5月、オバマさん来るんですかねえ」と尋ねた時のことです。「来たら大変よ。外相会合どころの騒ぎじゃないよ」と上司。「でも、ほら、アメリカ国内では退役軍人中心に反対する声も根強いと言いますし、大統領選だってヒラリーさんの調子が万全じゃないから気を遣うでしょうし。いくら広島の人が来てほしいと言ったってアメリカの国内事情がありますよねえ」と聞きかじりの意見を開陳した私に、上司がさりげなく答えた一言が、脳天を直撃しました。「広島の人はみんな来てほしいと思いよるように言われとるけど、どうなんかねえ。坪井さん(広島県被団協理事長)はそう言いよってけど、被爆者の中にはアメリカの大統領が広島に来るのに複雑な思いの人もまだまだおってんじゃあ思うよ」。一瞬頭が真っ白になりました。広島に戻ると決めた時、「広島の地元目線と、外からの視点、バランスをとりながらも、基本姿勢としては広島に寄り添いながら伝えていきたい」なんて意気込んでいたくせに、肝心の地元目線がすっぽり抜け落ちていたことに気付かされたからです。アメリカの国内事情がどうのこうのなんて、東京にいても言えること。でも、すべての被爆者がオバマ大統領の訪問を望んでいるわけではない、というのは…。複雑な思いの人ほどテレビや新聞では発言しないので、東京にいる限りそうした人の声はほとんど聞こえてきません。知る機会も限られています。広島にいるからこそ、気付けたはずなのに…。

声なき声、声にできない思いこそ

あとで聞くと、上司のご両親はともに被爆されていて、上司は被爆2世。しかし、お二人とも被爆体験については口を閉ざしたまま亡くなられたとのことでした。だからこそ、声をあげていない、あげられない人に思いを致すことができるのかもしれません。私たちはどうしても大きな声をあげた人の意見が大勢だと思ってしまいがちです。しかし、声なき声にも耳を傾ける努力を怠らないこと、そして声をあげた人にもそこに至るまでにはいろいろな葛藤があり、声にできない思いがあるのを忘れないこと、しっかりと胸に刻んでおこうと思います。

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訪問がほぼ確実と報じられた4月24日付中国新聞、社説の見出しは「被爆者の声に耳を傾けよ」でした。「被爆者がどれだけの思いで核兵器廃絶を叫んでいるのか。オバマ氏にはどうしても、生の声を聞いてもらいたい」、それが「核兵器のない世界に向けた動きを再び加速させる原動力となる」と論じていました。情に傾きすぎず、大局を見据えつつ、かつ被爆地広島のメディアとしての視点も忘れていない、ってこういうことなのかな、と思います。オバマ大統領が平和公園を訪れることがゴールではありません。広島訪問をただのレガシー(遺産)作りで終わらせてはいけません。そこから、本来の目的である「核兵器のない平和な世界の実現」に向けて一歩でも前に進むことを願ってやみません。

今こそグローカルな広島を

広島の視点と、外からの視点。近くをじっと見つめる虫の目と、俯瞰で全体を眺める鳥の目。国境を超えた視野と草の根の地域の視点でさまざまな問題を捉えていこうという「グローカル」な考え方は、生まれ育った場所を離れた経験がある人の方がとっかかりやすいのではないかと思います。東京の広島ジンのみなさま、ぜひぜひそのメリットを最大限いかして、「広島、もっとこうしなよ!」な着眼点、アイディアをじゃんじゃん広島在住の広島ジンと交わしましょう!みんなでちょっとでも広島をよくすることができたら、楽しいですもんね…つまり、みんなでもっともっと飲み、語りましょう(笑)!

東京にいる広島ジン・nextひろしま集合写真

ここまでお読みくださった方々、ありがとうございました。長文・拙文、何卒ご容赦を。

(了)

コラム:広島ジン、故郷(ヒロシマ)に帰る ~東京10年、ワシントンD.C.経由~
  1. 8・6生まれの広島ジン、東京で故郷(ヒロシマ)にめざめる
  2. 広島ジン in ワシントンD.C.
  3. ワシントンD.C.から広島へ 世界が注目するなかで

注)一個人としての広島ジンが体験した範囲での個人的な意見です。ご了承ください。

writer紹介

長通 麻弥(ながどおり・まや)

東広島市出身。大学卒業後、広島の放送局でスポーツ・報道を担当。 30歳を前に自分探し症候群にかかり、「スペイン行きます」と退職。 スペインに10か月、イングランドに2か月滞在したのち帰国。 名古屋(1年)を経て東京に居を移し、再び番組制作の道に舞い戻る。 東京でスポーツ・報道・情報番組に携わること10年、 この4月から広島に戻り、主に広報番組を制作しています。 もうちょっと計画的に生きたいと思いつつ、行き当たりばったりな人生を送っています。

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